御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない



もともと人通りの少ない道に響くのは私の足音だけだけれど、明らかに背後に気配がある。
住宅街だし、なにかされても大声を出せば誰かしらが気付くと思う。でも、だからといってこのままマンションまでつけられるのは気持ちが悪い。

歩きながら、ひとつ深呼吸をして気持ちを切り替える。
そして「よし」と自分自身を奮い立たせるように呟いたあと、勢いよく後ろを振り返った。

それと同時に人影が走りだすので、咄嗟に私も追いかける。

犯人が誰にせよ、実害がないからといってこのままやられたい放題でいるつもりはない。
動機があるのだろうし、きちんと聞いて解決しないといつまで経ってももやもやしたままだ。

スタートはほぼ同時だったと思うのに、前を走る人影は徐々に遠くなっていく。
足の速さに驚きながらも、私も体力が続く限り追いかけたのだけれど、道の角を細かく曲がられるうちに見失ってしまった。

立ち止まり、膝に手をつきながら荒れた呼吸を整える。
ほぼ毎日ジョギングしているし、体力にはそれなりに自信があったのに……と少し悔しくなりながらも体を起こし、悔しさにため息を落とす。

それから気持ちを切り替え、元の道に戻ろうと歩きだしたところで、途中にあった自販機に身を潜めている人物に気付いた。

ドッと心臓がひと際大きく跳ねる。
夜空の下、白い明かりを放つ自販機。その陰に隠れ、肩で呼吸をしている人物にドキドキしながらもそっと近づき……目を見開いた。

だって……まさか。