三人で駅まで向かう道中。最初に口を開いたのは君島先輩だった。

「なんか……意地が悪いのか潔いのかよくわからない人だったわね」
「そうですね……。でも、私にはそこまで悪い人には見えなかったです。たぶん、私を見定めるっていうよりも忠告が本題だった気がするので」

最初は、前者だと思った。
東堂さんが好きだから、恋人である私がどんな人間なのかを確認したかったのだと。

でも……あれだけ私に〝気を付けてほしい〟と繰り返したのだから、そっちが本題だったのは疑いようがない。
彩佳さんには、なにか事情があるのだろうか……と考えながら呟くように言う。

「私、東堂さんのこと、なにも知らないんだなって思いました」

付き合いだしたからといって、東堂さんのすべてを把握したいなんてうぬぼれた気持ちは持っていない。
私には、東堂さんの話したいことだけ言ってくれればいいし、言いたくないことまで暴こうとは思わない。

それは付き合いを持つ上でのエチケットのようなものだと考えているから、そこに寂しさは感じない。

けれど……きっと彩佳さんは私よりも東堂さんに近い場所にいる。

それが、東堂さんのことを話す口ぶりや態度からわかってしまい、少し苦しくなった。

「知らなくて当然じゃない? だって付き合って一週間で、しかも東堂さんはこの五日間フランスでしょ? お互いのこと知ろうにも時間が圧倒的に足りてないもん」