「薬物って、冗談だよね?」


和田さんはメガネの奥の目を見開いて驚いている。


「靖と仲がいい美紀が言ってるんだから、本当のことなんじゃないの?」


あたしも、クラス全員に聞こえる声で言った。


「おいお前ら、好き勝手言ってんじゃねぇよ」


声をあげたのは陸だった。


昨日あれだけ虫を吐き出してくせに、やけに元気だ。


「あれ? 体調はもういいの?」


あたしはわざと陸に尋ねた。


陸は顔を赤くして睨みつけてくる。


キレやすい性格なのだ。


「怒るばっかりするから虫が出てくるんだよ」


夢はそう言って声を上げて笑う。


あたしもつられて笑ったが、誰も笑わなかった。


陸はチッと舌打ちをすると大股で教室を出ていった。


どこに行くつもりだろう?


次は陸の番なのに。


追いかけようかと思ったが授業開始まで1分を切っていたので、あたしたちはあきらめて教室に残ったのだった。