それからしばらくして、私と春日井くんは二年生の教室にいた。
懐かしさに浸るために訪れた教室は、既に私たちの下の代が使っているからか雰囲気が異なっているように感じる。


「教室で初めて春日井くんと話したんだよね」

声をかけられた日のことを思い出して、隣に立っている春日井くんに微笑みかける。


「驚いたなぁ。いきなり告白されて」
「俺も驚いたよ。いきなり未経験者じゃないからって理由で断られて」

あれは、春日井くんみたいなチャラそうな人は面倒くさそうとか勝手に思っていて、その返答で諦めてくれるかなと思ったというのもある。

それでも私のことを好きでいてくれるなんて思いもしなかった。



「ねえ、春日井くん」

二年生たちは卒業式が終わって少しすると、全員帰ったようで人の気配がない。だから今がチャンスだ。


「私たちは今日で制服が着れなくなります」
「そうだね。綺梨ちゃんの制服見納めかぁ。寂しいな」
「ということで、おもいっきり目に焼きつけさせて!」
「え、俺の制服姿なんて目に焼きつけてどうするの」

制服を着た高校生春日井くんはプレミアものになってしまう。じっくり、それはもうじっくりと見たいのだ。


「それに私ね、まだまだやってみたいことがあったの」
「……嫌な予感がする」