いけない。
さあ、指輪を見つけてあげないと。


水晶に集中すると、すぐにとある場面が見えてきた。

この男性が、棚の……これは食器棚のようね。後ろの壁と棚の隙間から、指輪を掴み出すところだった。


「ご自宅だと思うけれど……こげ茶色の食器棚ってありますか?」

「ええ。我が家のキッチンに、あります」

「その棚の後ろ。壁と棚の間よ。そこにあると思うわ」

「本当ですか!!ありがとうございます。早速探してみます!!」


カウンターでドリーにお金を払うと、男性は1秒を争うような素早さで、文字通り森の中を駆けていった。シカの姿で。