「セシリアが嫁いでいったら、ローズベリー家は従兄弟にでも託して、私は田舎にでも行ってゆっくり過ごすかな」


欲のない父は、貴族として王都で過ごすよりも、その方が自分に合っているとわかっていたのだろう。
せめて、それだけでも叶っていて欲しい。



ああ、そうか。

もし水晶の中に、父が顔をしかめて過ごす姿が見えたのなら、私がここへ連れてきてあげればいいのか。

ここでやりたいことをしてもらってもいいし、サンミリガンへ行ってみることを勧めてもいいのかもしれない。父なら、人間でも獣人でも、うまく付き合っていけそうだ。


ふとそんなふうに思ったら、自然と心が落ち着いていった。