婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

事情はわかった。
それじゃあ、どんな種族の獣人が来店していたのかが気になってくる。


「えっとね、シカ、タヌキ、イヌ……とかだよ」



獣人が人型でいることは、苦にならない。というか、一日の大半は人型で過ごすようだ。現に、チェリーだってここにいる間はずっと人型だ。

ただ、疲れが溜まっていたり、怪我を負っていたりした時は、本来の獣の姿でいた方が回復が早いため、獣の姿になるという。

それから、パートナーといる時は、獣の姿で甘えることも多く、毛繕いをしてもらう時間が至福の時になるらしい。


「宿泊用の部屋にね、板張りのスペースがあるでしょ?」


そうそう。
初めてここへ来た時、なんのためのスペースなのか、気になっていたのよ。


「あれはね、特にネコ科の獣人のお気に入りスペースなの!!暑い時期に、あのひんやりスペースで寝そべって過ごすの」


なるほど。そういう配慮がされていたんだ。
ゆるゆる経営かと思っていたけれど、意外と気遣いのできる宿らしい。