婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

私がこの宿に来てから、1ヶ月ほどが経っていた。

今さらながらに、気が付いたことがある。この宿屋、なんて名前なの?


「名前?そんなのあったかなあ……?」


可愛く首をかしげたチェリー。
外観からすると、けっこう長くやっていそうな宿なのに、その従業員が、名前があったかどうかすらわからないって……


「え?名前がなかったりするの!?」

「うん。森の宿とか呼ばれてるかな?この辺って他になあんにもないから、それだけで通じちゃうの」

「へ、へえ……」


まあ、そういうことなのだろう。
ここに来て以来、細かいことを気にしたら負けのような気がしてならない。


ちなみに、未だにふとした時に毛玉がよぎるのを見かけるけれど、グノーとはまだ顔を合わせられていない。

客室係のミーとナーも、客のいない時は来ないようで、2、3度顔を合わせたぐらい。