婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

自ら額を擦り付けてくる、あの可愛らしさ。つぶらな瞳は、真っ直ぐこちらを見つめてきて……

触れた毛は、手入れをされていないにしてはふかふかだった。さらに深く指を忍び込ませれば、生き物の温かみを直に感じることができて、胸の奥が温かくなっていく。

見ているだけでも、可愛くてほっこりしていたけれど、触れれば心が癒された。
窮屈な毎日に、いつのまにか溜まっていた疲れが一気に吹き飛んだのを覚えている。


思わず懇願するような視線をチェリーに向ければ、彼女は鈴の音のような声でカラカラと笑った。


「いいよ!!家でもしょっちゅうハロルドに毛繕いをしてもらってるの。
獣人によっては……うーん、種族にも関係するかもしれないけどね、触ってもらうことを喜ぶ獣人もいるんだよ」


パッとウサギの姿になるチェリー。
ああ、可愛い。


「私も、その1人なの!!特にね、首の周りがいいの!!」

早速、くいくいって指を使って首の周りを掻いてあげると、瞳をとろんとさせたチェリー。


そうそう。
伯母の家で触れたネコも、こんなふうに温かかった。