婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

チェリーが上がる少し前。意を決してお願いしてみた。


「チェリー、お願いがあるんだけど……」

「なあに」

「もしあなたが嫌じゃなかったらね……」


コテンと首を傾げるチェリー。
人型でも可愛い。
それはそうなんだけど……


「ウサギ姿のあなたに、その……さ、触らせてもらいたいの」


キョトンとするクリックリの瞳が、とてつもなく可愛く見える。



セシリアとして、型にはめられた生活を送っていた時、近寄ってくる動物に触れることなんて許されなかった。

けれど、叔母の元へ遊びに行った時だけは、庭をうろつく人懐っこいネコに触ることを許されていた。叔母も父も、他人の目がなければそれを咎めるような人じゃなかったから。