婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

掃除を終えてカウンターに入ると、皿に乗ったサンドウィッチが置かれていた。グノーがこうしていつも用意してくれるらしいけれど、姿を見せないのは徹底しているようだ。

カウンターで食事?と思ったけれど、気にしないでいただくことにした。ここは貴族のお屋敷じゃないのだから。

複数種類のサンドウィッチも、一緒に添えられた温かいスープも、なんだかホッとするような美味しさだ。
今はもう、礼儀作法なんて堅苦しいことを気にしなくてもいい。ここでのルールさえ守れば、好きなようにさせてもらえる。この新生活もなかなか悪くなさそうだわ。


「グノー、ごちそうさま。美味しかったわ。ありがとう」

姿は見えなかったけれど、声をかけながら食器を指定の位置に置く。
もちろん、と言っていいのか……グノーからの反応は、なにもない。いるのかさえ不明。

そのうち、一目でも会えればいいけど……


クルリと踵を返したその瞬間。視界の端に、毛玉のようなものがよぎった。

「ルー?キッチンに入ったらだめよ」

ルー……だったのよね?

一応、ドリーに報告しておこう。