婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

なんだかんだ思うところはあるし、不安もあるけれど、これからは違う生活が始まると思うと、ワクワクしている自分がいる。

これまでみたいな型にはめられた生活も、それなりに納得はしていたし、大きな不満があるわけでもなかった。だって、物質的に不自由なく過ごさせてもらえてたから。

けれど、そこには少なからず諦めのような気持ちも感じていたのは否定できない。自由になった今振り返ってみれば、これまでの生活はしてはいけないことに溢れていた。


「さあさ。掃除道具はあの中だ。仕事をはじめるよ」


早速箒を手にすると、窓もドアも開けて掃き掃除を始めた。
こんなこと、令嬢だったら一度だってすることはなかった。まあ、そもそもドレスなんて着てたらできなかったんだけど。
自宅にあった、侍女達の服を持ってきて正解だったわ。


静かな森の奥。天気も良くて、空気も綺麗。
となれば、鼻歌も飛び出すというもの。

清潔な布でテーブルを拭き終えると、ついでに外もやってしまおうと、再び箒を手に外へ出た。

その時、ふと視界の端をよぎる〝なにか〟が見えた……気がする。


「なに?」


目覚ましネコのルーかしら?しっぽのように見えたけど……
それにしては、ぼわんとして、ルーのものより丸っこい気がしたわ。

首を捻りつつ、手を動かしていく。

まあ、この大自然の中だ。野生動物もいるのかもしれない。