婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

今夜からここで寝泊まりするようにと、ドリーに案内された部屋は、この建物の一番奥にある小部屋だった。
この世界にも、日本のような畳があるのかと驚いたけれど、ドリーによるとい草ではないらしい。


ざっと見せてもらったけど、この宿には基本的に和室しかない。
しかし、なぜか各部屋の一角に不自然な板張りのスペースがあるという、なんだか不思議な造りだ。

和室だから、もちろんベッドはない。何も知らないグリージアの人間なら、どこでどうやって寝るのかとパニックになっていたかもしれない。
けれど、前世の記憶がある私には、なんの問題もない。

もっと言えば、これまで貴族令嬢だからって、家事はもとより、仕事なんてやらせてもらえるはずがなかったけど、私は働くことに抵抗はない。むしろ、働かざる者食うべからずとすら思ってきた。

そもそも、貴族令嬢としてお淑やかに過ごすこと自体が、自分には合っていなかったのだわとすら思えてくる。
こうしてここに導かれたのも、きっと運命だった。セシリアとの決別も、占い師になると決めたことも、ずっとずっと前から決まっていた運命。


ドリーから聞いた通り布団を出して敷くと、早々に潜り込んだ。すっかり疲れていたようで、横たわったと同時に眠りに落ちていた。