婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「ライラの持っている、その占いの能力をさらに磨いて、ここを手伝いながら占い師として客をとって欲しい」

「は?」


ドリーの突飛な発言に、令嬢らしからぬ声が漏れてしまう。まあ、もう上品に取り繕う必要もないからいいけど。


「えっと……」

「なあに、難しく考えんでいい。わしももう歳だ。チェリーらの手伝いもあるが、わしの代わりに女将を任せられる者がおらん。あの子はいずれ家庭に入ってしまうだろうから。
このタイミングでライラがここへ導かれたということは、そういうことなのだろう」


そういうことって、どういうことよ?
百歩譲って〝女将を〟っていうのはわかるわよ。
ドリーは元気そのものに見えるけれど、確かに若いとは言えないから。

けれど、それに付随した〝占い師〟ってなによ!?


「ドリー……ちょっと、頭がついていかないわ……」

「そうか?難しく考えなさんな」


いや。考えるところでしょうが。

「そもそも、こんな森の奥に、お客がたくさん来るものなの?それも、占い目当てで」


確かに、さっきの料理は美味しかった。けれど、わざわざここまで来て食べたいか?って聞かれたら、〝はい〟とは即答できないような……

立地条件がよくて、ここよりさらに手厚いおもてなしをしてくれる食堂も宿屋もたくさんたるはず。


いや。
あの可愛いチェリーがにこっと笑って……たまにウサギの姿にもなって……


って、いけない。
王太子の婚約者だなんて重荷がなくなった途端、思考の自由がすぎるわ。