婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「わしとライラを繋ぐもの。それは、セシリアの水晶だ」


セシリアの、水晶……?

私の荷物に目を向けるドリーに、ハッとする。なんで水晶を持っていることを知っているのだろう?
首を傾げつつ、食器を脇によけて、水晶を取り出した。

布を敷いた上に水晶をそっと置くと、そこにドリーが手をかざした。
途端、水晶が淡く光を放ち出した。

「なっ……えっ……」

軽くパニックになりかねた私を諌めると、ドリーは説明をしてくれた。


「これは、あのタイミングで、あの店に、わしが意図的に紛れ込ませたものだ」

ドリーが言うあのタイミングとは、私の10歳の誕生日のことだろう。父と雑貨屋を訪れた様を思い出していた。


「なんのために?」

「そんなの、おまえさんにこれを、手に取らせるためだ」

手に取らせるため?
決まってるだろって顔をしてるけど……全く意味がわからない。

でも、確かにあの時、なぜか無性にこの水晶が欲しくなったことは、今でも鮮明に覚えている。