婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「いただきます」


温かいスープに肉料理。焼き立てのパン。
これまでの生活よりずいぶん質素な食事に見えるけれど、味は素朴で本当に美味しい。あっという間に完食していた。



「ごちそうさまでした。お代は……」

「ああ。いらん、いらん」

めんどくさそうに手を振られて、出しかけた巾着から手を離した。
でも、さすがにタダというわけにはいかない。


「それより、ライラ」

「ど、どうして私の名前を?」


そうだった。
美味しい食事を目の前にして、すっかり忘れていたわ。


「ああ、そうだったな。それも含めて説明しよう。と、その前に、私の名前はお婆さんではない。ドリーだ」

「私の頭の中を、読んでます?」

ここに来てから、一度だって〝お婆さん〟と口に出してはいないはず。


「人の心を読む力なんて、わしにはないさ。なんとなく、頭の中に浮かぶだけ」


この人、侮れないわ。
どんな力を秘めているのか……なんて思ったことも、瞬時に伝わってしまいそうだ。