婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「ぬめぬめしていない」

「あたりまえだ」

心外だと言わんがばかりのルーカスだけど、怒ってはいないようだ。だから、もう少しだけこの手触りの良い髪を触らせてもらうことにする。
彼がオオカミになった時もこんな触り心地なのかと、思わず想像していた。


「毛繕いは番の役割」

「は?」

「ライラ!!」

ガバっと抱き付いてきたルーカスの逞しい胸元を、ぐいぐいと押し返すもピクリともしない。


「ジャ、ジャレット。おたくの王子様、どうにかしてよ」

「ルーカス様、落ち着いてください」

「これが落ち着いていられるか!!ライラが俺に、番の毛繕いをしたのだぞ」

「いや、撫でただけだから。深い意味はないわよ」

私の声など少しも聞こえないのか、回した腕にぎゅっと力を込めるルーカス。地味に苦しい……


「カエルの呪いさえ解ければ、ちゃんとオオカミの姿にもなれる。そうなれば、ちゃんと番の契りを交わせる!!」

「え?オオカミになれなくなってたの?ていうか、契りってなに?」


お願いだから離して欲しい……