婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「数ヶ月前、マージュミアルのある一人の魔女が、獣人を意のままに操る香草を発見したと、俺の元に情報が漏れ聞こえてきた。
密かに調査をさせたところ、どうやら複数の香草を組み合わせて加工して、香として焚くのだそうだ」


貴族の間では、確かにそうして香りを楽しんだり、安眠効果を得ようとしたりする人達もいる。
獣人を操るだなんて、そんな危険なものがあるなんて、すぐには信じられないんだけど……


「獣人にとって……その種族にもよるが、苦手な匂いがある。鼻が効きすぎてのけぞってしまう程度のものから、一時的に理性を奪ってしまうものまで様々だ。
その魔女が生み出したものは、どうやら動物の姿になれなくするものらしいと報告が上がってきた」


よくわからないけれど……それが意のままに操ることにはつながらない気がするわ。


「人型のままということは、多少人より体力が優れ、鼻が効くとか夜目が効くとか程度になる。つまり、場合によっては複数の人間がいれば、獣人を拘束することも可能だと思う。
もしくは、そうした状態でさらに、幻覚を見せる香を嗅がせたり、視覚を奪うもの、催眠効果のあるもの……とにかく、身体の自由を奪った獣人に、なんでもできるようになるということだ」