婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「ルーカス様。失礼ながら言わせていただきます。あなたにとって、獣人の1人ぐらいどうなってもいい存在ですか?」

「そんなことはない」

「アルフレッド様。グリージアの人間にとって、獣人はただソリの合わない種族でしかありませんか?監禁されようが、殺されようが、どうでもよい存在ですか?」

「そんなはずはない」

「でしたら、言い合いなんてしてないで、私の息子を助けてください」


ジンの叫ぶような声音に、2人の雰囲気が変わる。さっきまでだって、決してふざけていたわけじゃない。けれど、ここで2人が対立していても意味がないと気が付いたようだ。


「息子の嫁は、妊娠中なんです。彼の不在に心をいため、体調を崩しています。私たち家族には、ギムはいなくてはならない存在なんです」


ジンは、今ここに、こうして留まっていることが歯痒くて仕方がないはず。こうしている間にも、ギムの状況は変わっているかもしれないのだ。