婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

「え?」


掴まれた自分の手に目をやり、続いて掴んでいる人物に視線を向ける。
ルーカスは、何かを探るようにじっと見てきた。

その瞳の奥に、なにか熱いものを感じて、なんだか居心地が悪くなってくる。


「……えっと……?」

「ルーカス様?」


ジャレットと私の戸惑う声がかぶる。
ルーカスはしばらくそうしていると、「名前を教えてくれ」と尋ねてきた。


「ライラ・ガーディアン、です」


なんだろう?ものすごく見られてるんだけど……
まだ自分自身が完全には慣れていない、新しい名前を告げると、ルーカスは小声でぶつぶつと復唱した。


「あ、あの……?」

「ああ、すまない。ライラ、迷惑をかけるがもうしばらく、ここで休ませてもらう」

「え、ええ」


それはかまわないんだけど……
未だに手首を掴まれたままなのはなぜ?