婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。

まだ眠っている男性を起こさないよう、そっと近付いて……

え?

目の前の違和感に、足を止めた。
一歩離れたところからそっと覗くと……


「オ、オオカミ……」


布団に横たわっていたのは、ダークブラウンの毛色のオオカミだった。


「獣人……さん?」

「そうだ。ジャレットは、オオカミの獣人だ」


ハッとして振り返れば、いつの間にか先ほどの男性が立っていた。


そういえば、傷を癒すには、獣の姿の方が早いって聞いたけれど、もしかして……

男性と、ジャレットと呼ばれたオオカミの間で視線を彷徨わせた。