溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。


こんな風に翻弄してくるから、私だって気持ちを止められなくなるの……。


ジャー……


気づいたら、もう背後に凪くんはいなかった。


「えっ?」


出しっぱなしの水と、両手を前に出したまま突っ立ている私。


やだっ……意識が飛んでた。


慌てて顔をあげると、凪くんはカウンターキッチンの正面で頬杖をついて、ニコニコしながら私を眺めていた。


ううっ……。


私を翻弄するだけ翻弄して、


「ちゃんと手、洗いな」


そうかと思ったら、急に私を放り出して。


凪くんは、罪な人──