溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。


やんわり遠慮すると、子どもみたいに唇を尖らして、後ろからぎゅっと抱きしめられた。


「ちょ、凪くんっ……?」


振り向くと、私の首元に顔をうずめるように凪くんの顔がすぐそこにあって、慌てて前を向く。


「これじゃあ……洗えないよ……っ」


身動きが取れなくて腕の自由もきかない。


そう訴えれば、私の手からスポンジが奪われた。


「だったら俺が洗ってあげる」


背後から伸びる腕がお皿を掴み、スポンジを撫でつけていく。


ええっ、この状態で……?


なのに凪くんの手はとっても器用に動いて、二人分の少ない食器はあっという間に泡に包まれていく。