溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。


ズキンッ。


私が振られたわけじゃないのに、すごく胸が痛くなった。


胸が痛いのは、泣きたいのは、あの子のはずなのに……。


『好きな子がいる』


凪くんの言葉が、頭をぐるぐる回って離れないんだ。


あの子も、"やっぱり"って言ってた。


好きな子っていうのは、ウワサに上がってる女の子のことなのかな……。


このまま凪くんに会うのも気まずいし、私はそのままくるっと回れ右をして、来た道を戻った。


中庭の隅っこでうろうろしていると、すぐに凪くんがやって来た。


「ごめん、お待たせ!」


何ごともなかったかのように、いつもの凪くん。


「うん」


私も無理やり笑顔を顔に張り付けた。


結局座るところがないから非常階段に行こうということになり、2年生のフロアの非常階段に腰を下ろした。