溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。


こんな場面に遭遇するのは初めての経験で、心臓がばっくんばっくん鳴り始めた。


どうしよう……この先へ進めない。盗み聞きしてると思われても困るし。


校舎の角の手前で、私は動けなくなってしまった。


この角を曲がったら、きっと告白現場を見ちゃうから。


すると。


「ごめん、キミとはつき合えない」


それは凪くんの声だった。


「……っ!」


用事って、女の子に呼び出されてたんだ。


……モテるって、本当なんだなあ。


こんな昼間に呼び出して告白する女の子もすごい。


「そっか……」


落胆したような女の子の声。


そーっと壁越しに覗けば、同じ学年の女の子だった。すごく可愛いテニス部の女の子。