「どうした?言いたくないならいい」

「言って、いい……?」
 
 誰かに、聞いてもらいたい……。

「ああ、言ってごらん」

 優しく頭を撫でてくれた蓮お兄ちゃんに、余計に涙が溢れた。

「げ、幻聴がっ……ひっく……」

「幻聴……?」

「不良みたいな人が、お母さんの名前を言ってて……」

「……そうか……怖かったな」

「うんっ……」

 なんで、そんな幻聴だけで泣いちゃったんだろう、私……。

 でも、怖いのは本当だ。

 なにか、全身が嫌だと叫んでいる。