【side 月】

 っ……なんだ、いまのはっ……。

 すげードキドキしたっ……。

 あの先輩、めちゃくちゃ可愛く見えた……。

 あんな地味な格好をしてるのに……。

 それに、俺の名前知ってた……?

 あー……なんか嬉しい……。

 そもそも、なぜ高等部校舎にいたかと言うと、姉ちゃんに渡したいものがあったからだ。

「あら?月じゃないの?」

「姉ちゃん。これ、弁当。忘れてたよ」

「まぁ、ありがとう」

「朧ちゃ——あ!さっきの……!やっぱり朧ちゃんの弟くんだったんだね、間違えてなくてよかったぁ……」

 ね、姉ちゃんとおんなじクラス……?

「わぁっ……やっぱり2人とも似てる……!絶世の美男美女さんだねぇ。」

 な、なんかふわふわしてるな、この人。地味で暗そうなのに。

「おい!!お前か!!小倉結乃」

「…………あ……確か……うーん……えっと……knightの……?」

「今日タイ——」

 タイ?

「いいですよ。だから帰ってください」

「チッ」

 なにアイツら、感じ悪……。

「ごめんね朧ちゃん……」

「なに?いいのよ。」

「ありがとう……なんかあったらすぐ私を呼んでね」

「ええ。遠慮なくそうさせてもらうわ」