抱き着かれる前に一歩下がって距離を取った。



「…近付いたら怒るよ」

「んえ…!?」



だってスーツで抱き着かれるとしわになるんだもん。今から仕事なのに、それは困るでしょ!

パパはこの世の終わりって顔をしていた。



「つ、遂に…花に反抗期…到来?…俺ちょっと東京湾行って来るわ…」

「親父それって沈む気でいる?」

「やめとけ親父。お嬢を泣かせる気か」



慰める二人の間で悲しそうなパパ。
…言い過ぎたかな?


自分から近付いてパパの顔を覗き込む。



「パパ?ごめんね。でもスーツにしわ出来るのは困るから。だから後で浴衣になってからじゃ駄目?」

「ぐぅッ!!」



しわになるぐらい強く胸を抑えた後深呼吸。


あ…、しわ出来ちゃったよ。



「ありがとう、花。そうだな、その通りだ…さっさと帰らせて花に抱き着くねっ!」



帰らせて?

それじゃあ、今日はパパが行くんじゃなくてお客さんが来るの?