「…お嬢、これどうしたの?」
これ?なんだろ?
下を向くと、右ひざに小さな傷があった。自分でも何処で出来たのか分からないぐらいの小さいやつ。
何処で怪我したんだっけ?
……あっ、そう言えば。
「車に乗せられる前に、少しだけ掠ったかな?」
今は痛くないけど。当たった時は少しだけ痛かったかな。忘れてたけど。
二人の顔色が段々と黒くなっていく。
「ほう…、」
煙草を落とし、踏み潰す。
「俺等の、五十嵐組のお嬢に怪我を…なぁ?」
首を回す度に関節が外れるんじゃないかと思うぐらいの音が鳴る。
「余程死を急ぎてぇみてぇだな」
「殺すか。どうせ表には出ない」
二人はニヤリと笑った。
あー…怒ってる。
凄い黒いのがモヤモヤ出てる。
見た目とか言葉遣いとか全然似てない風に見えるけど。実はこういう時、凄く似てるんだよね。不気味な笑い方が特に!
──────流石、双子の兄弟。
「お嬢、僕から離れないでね」
灰色髪、兄の東雲 和。
「チッ、俺が良いって言うまで離れんな」
黒髪、弟の東雲 湊。
どちらも、五十嵐組の若頭である。
離れるなってことだから…。
「うん!任せて!」
二人の服の裾をきゅっ。
「ん゛ん゛」
「…は、」
なんでこっち見るんだ!離れるなって言ったのそっちなのに!


