「おい!分かってんのか!こっちには人質がいるんだ!」




目の前に出されたのは果物ナイフ。
鋭く光る銀色の刃に私の顔が見える。

あと少しで当たりそう。




「いくら若頭二人だとしてもなぁ!
大事な大事なお嬢様がいたら──、」





足早いなぁ。二人共。

前世はコンパスか何かだったのかな。
その距離、たった3歩では来れないよ?



目の前のナイフと、その男が吹っ飛んだ。
飛んだ先には大きな木の箱で。

間違いなく怪我したであろう音と共に、突っ込んでいった。


縄が切られ自由になる。



「お嬢、怪我してない?大丈夫?」

「めんどくせぇ仕事増やすんじゃねーよ」



確認の為か全身出てる肌の部分をよーく観察された。

周りの人達は吹っ飛んだ人を見て怯むので精一杯。後退りで精一杯の様子。



膝を見た灰色髪の動きが止まる。
釣られて黒髪も止まった。