和が開ける前に、盛大に開いた。
そして風を切る音と共に、視界が真っ暗。



「はなぁぁぁ‼」

「ぱ、ぱぱ、重い…!」



抱き着かれた事でふらつく私を支えてくれたのは、後ろに立っていた湊だった。




御年、43歳。
五十嵐組、全国トップの頭。



組長、五十嵐 竜二(リュウジ)




白銀の白髪よりのオールバックと、腰まである龍の入れ墨。

若い頃は一人で一つのマフィアを壊滅させたと言われる最強の男。




───は、一人娘を溺愛していた。




「パパ…髭痛い…」



ほっぺを擦り付けてくるのは毎日の事。
その度にジョリジョリして痛い。



「んなぁ⁉やっぱ脱毛か⁉脱毛した方いいか⁉」

「親父、流石にそれはやり過ぎかな」

「パパ嫌って言われたらどうすんだよ‼」

「…反抗期は来んだろ、普通」

「は、花に…反抗期⁉…死ぬッ‼」