お腹周りに巻かれたロープの繋がった先は重たそうな鉄の扉。多分、ここは何処かの倉庫だと思う。

煙草の煙と強面のおじさん達。
小指の無い人もちらほら。


あっ!ちなみにこの人達は全員知らない人達だよ!顔見知りが一人もいないね!


聞こえてくる内容はパパの事。
もっと厳密にいうなら…五十嵐組の事。

私を人質にすれば、勝てると思ったらしい。
安易な考えだよね。そんなわけないのにさ。

カツン、落ちたライターが目の前に落ちてきた。拾ってみると、ブランドの名前が書かれた銀色のオイルライター。開けてみると古い物なのか、少しだけ変形していた。


「わぁ、凄い綺麗なライター!」

「おい、お前何言ってんだ返せ」


違うよ。私の名前はお前じゃない。

さっきも言ったのに。全然伝わってない…。



「だから!五十嵐 花(イガラシ ハナ)だってば!」



”誘拐”するならちゃんと名前ぐらい把握しておいてよねっ。

私の事なら調べればすぐにヒットするし、他の人と間違える事が無い地毛の色、ミルクティーベージュのミディアムヘアーだよ。

こんなにわかりやすいのに!どうして覚えられないの!