そんな台詞、どこで覚えてきたのか。

 一丁前にカッコつけながら、たどたどしくそう言ってのける、小さな小さな男の子からのプロポーズ。それには、顔がにやついて仕方なかった。


「えー、ほんとにー?」

「男に二言はないぞっ。」


 これで何度目だろう。事あるごとに、ドラマで聞いたような覚えたての台詞を使って、外で積んできたお花をプレゼントしてくれる。キザな男の子。

 もう、可愛くて可愛くて仕方ない。


 礼央は満足そうに走っていき、呆れ顔の双葉とは顔を見合わせて、いつも笑ってしまうところ。

「晴日のこと、本当好きだよねー。あのプレイボーイっぷりは、父親に似たか?将来が心配なんだけど。」

「いいじゃん、可愛いんだから。」


 礼央は、双葉が20歳の時に付き合っていた、売れないバンドマンとの間にできた子供。

 実を言うと、その頃アメリカにいた私は、妊娠のことなんて何ひとつ聞かされていなかった。産まれた後、電話の途中で報告をサラッと受け......。あまりの衝撃に訳がわからず、心底驚いたのを覚えている。


「でもどうする?千秋さんと別れて独身だったら、私、礼央と結婚してるかも。」

「絶対やだ!同い年の娘なんていらんいらん。ゾッとしちゃう。」


 結局、バンドマンの彼とはすぐに別れてしまい、今はシングルマザー。

 そんな冗談で笑いながらも、せっせと家事に忙しくしていて、言葉にはしないけれど尊敬の思いしかなかった。