淡々と話していく推理に追いつけず、キョロキョロと目だけを動かし、頬杖をつく。

 言わんとしている意図がまだ、いまいち理解できていなかった。


「前のことがあったから、人間不信というか。その人とお父さんが知り合いだったってだけで、騙されたと思ったんじゃないっすか。ってことです。」

「あー、んー.....」

「だってそもそも、前のお見合い相手がいたのに、新しい人送り込む必要あります?偽装結婚しようって話が出た後に、お父さんからお見合い相手と結婚しろって言われてるんだから、普通に考えれば、おかしいことくらい――。」


 饒舌(じょうぜつ)に話し出す彼は、別人のようだった。


 でも、たしかに言われてみればそうだ。

 今まであったこと全ての記憶をすっ飛ばして、私は騙されたのだと思い込んだ。ちゃんと冷静になって考えれば、おかしいことくらい簡単に分かったはずなのに。

 どうしてこんなにも単純なことに、気づくことができなかったのだろう。


「でも、製薬会社の社長だってこと隠してた。父のことも、私と会う前から知ってたみたいだし。彼の1番の競合他社と、私は結婚させられそうになってた。」