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夕焼けは殊更に朱く街を染めた。そして間もなく、暗闇に星が輝くのだろう。

「明日晴れたら仲直りしてみなよ」

きっかけだけが足りない君に、少しばかりのお節介。

「お節介おばば」
「ちょっと!口が悪いね、ほんと」
「……じゃあ、明日晴れたら。一言、声だけかけてみなよ」
「どっちがお節介……」


帰り道、私も君も“ありがとう”なんて言葉はないのに優しくって温かい。言葉足らずのお節介が私達の距離。

運動部員達の「お疲れっしたー!」という元気な声を、背に受けて。

「不思議なんだよね、ずっと。どうしてそんなに君は他人に期待ができるのか」
「期待?」
「期待したら、いつか裏切られてしまうかもしれない」
「でも……おじいさんの事は期待?信用?してるでしょ」
「だってそれは積み重ねた時間があるから。どんな私になっても見放さないでいて……くれる、から」

言いながらにして自分の考えの矛盾に気づく。
そうか、私だって無意識にじいちゃんのことを信用していた。けれどそれは、多分、家族だからって言う単純な理由じゃない。
祖父と祖母も再婚同士で。あの人は祖母の連れ子だった。だから私とじいちゃんには血の繋がりがなくて、それでも私はじいちゃんと家族で。
あの日、寄せ集めの家族って言葉は、自分に向けた言葉でもあった。
もしかしたら、血の繋がりのある仲良し家族のあの子が、本当は羨ましかったのかもしれない。

ぐるぐると頭の中で考えて、ちらりと君を見ると全部わかったように笑ってた。



ことばたらず・完