侍女に礼を述べて自ら少女達の前へと歩み寄り、可憐にお辞儀をしてみせ、いつも通りを心がけながら名を名乗る。

「初めまして。イリア・バーリアスと申します。この度はこのようなお茶会に参加できることを心より楽しみにしておりました」

「初めまして、イリア様。わたくしはソルジャー家長女、ハンナ・ソルジャーと申します。遠いところからようこそお越しくださいました」

挨拶は見事クリアできたと安心しつつ、まだ気を弛めてはいけないと姿勢はしっかりと真っ直ぐ保ったまま言われた通り空席へと足を向けた。

「それでは全員揃いましたね。これよりお茶会を開催致します」

自分の席に紅茶の注がれたティーカップを置かれ、会釈するとハンナが侍女達に下がるように命じた。

皆が片手にティーカップに手にして、一口啜るのを真似しながらとりあえずの様子を伺おうとしたその時。

聞こえなくなった足音にテーブルを囲む少女達は、肩の力を抜くように姿勢を崩し始めた。

「今日の侍女達は中々にしぶとかったわ」

「いつものお付の方は?」

「休暇を取って実家に帰っているの。お陰で皆には堅苦しい思いさせたわね」

「まあ、こういう日もあってもいいんじゃない?スリルがあって少し楽しかったし」

楽しそうに笑う少女達に完全に置いてけぼりを食らっているイリアは、どうしていいものかともう一口紅茶を啜った。

そんなイリアに少女達はじーっと嬉しそうな視線を向けてきて、カップを置いて口を噤んだ。