川沿いの舗装された綺麗な道を走って暫くすると、赤レンガの屋根が特徴的な街へとたどり着く。

見慣れない風景に辺りをキョロキョロとしてしまう自分に、いつだって冷静でいることとエルメナからの教えを思い出し姿勢を正した。

「この場はまだ殿方はいらっしゃらない。まずは令嬢としての嗜みを取得したという証を示す場に行くだけ……だから冷静に」

一つ深い深呼吸をして心を落ち着かせていると、見えてきた立派な屋敷にいよいよだと拳を握りしめた。

御者が馬車の扉を開けてくれ、馬車から降りると屋敷の侍女であろう女性が待ち構えていた。

満点を貰った可憐なお辞儀をして見せると、イリアに惚けたような表情を浮かべる侍女に首を傾げつつ名を名乗る。

「イリア・バーリアスです」

「お、お待ちしておりました。お嬢様方は奥の花園でお待ちです。ご案内させて頂きます」

侍女に案内されるがまま屋敷の庭園を進んでいくと、一面の薔薇が咲き誇る場所にアンティーク調のテーブルを囲む少女達の姿が見えた。

ーーいよいよだわ!

アゼッタから貰ったブローチにそっと触れて気持ちを固めると、気配に気づいたのか令嬢がイリアに注目する。

可愛らしいドレスを身に纏う少女達は、イリアよりも歳が三つ四つ下であろうまだあどけなさの残る顔には令嬢としての品が咲いていた。