ただ妙に体が言うことが聞かないことに不思議に思いながら、筆を走らせようと試みるがいつものように文字が書けずにいた。

ーー頭がフワフワするのも、達成感で浮かれているせい……?

視界が霞みその都度目を擦ってみるものの、一向にいつも見える風景が見えてこない。

これでは時間が勿体ないと薬草作りに切り替えようと立ち上がろうとしたその時、急に足の力が抜け地面に叩きつけられると覚悟した。

「イリア!」

思っていた痛みがやって来ることはなく、ヒューリの声がすぐ近くで聞こえた。

どうやら崩れ落ちる前にヒューリに抱きとめられたようで、彼の優しい臭いが鼻を擽る。

ぼやける視界の中、ヒューリの焦ったその顔が映し出されて頬に手を伸ばした。

「ヒューリ……?どうしたの?」

「それはこっちの台詞だ!疲れているならしっかり休まないと身が持たないだろう」

「疲れてなんかない……よ?」

「嘘をつけ。ろくに睡眠も取っていないくせに」

やけに怒り口調の彼に心配ないと口を開こうとしたが、ついに体が言うことを効かなくなってしまった。

ただ大丈夫だと最後の力を振り絞るように、首を縦に一つ振ると自分よりも大きな手の温もりが肩を撫でた。