エルメナの指示通りにセンルに向き合うように真っ直ぐ立つと両手を伸ばす。その格好のままでいるとセンルが基本的な構えを丁寧に教えてくれ、ダンス開始前の基本的姿勢の準備は整った。

その基本姿勢でさえもエルメナの鋭い視線が突き刺さってくる。

「地面から垂直になるように真っ直ぐ、且つしなやかに見えるように意識して下さい」

「は、はい!」

「肩の力は抜く!」

「こうでしょうか!」

何度目の指摘が入った後、ようやくダンスの基本的動作を始められるようにはなったが現時点でイリアの息は少し上がっていた。

まだこれは序の口だとエルメナは彼女にお構いなく動作を叩き込んだ。

そもそもダンスというものも今まで触れてこなかったせいで、リズム感もないに等しい。

そんな状態でイリアに指導を叩き込むエルメナ自身も、骨の折れる作業には変わりない。

「基本ステップはまず体で覚えることから始めて下さい」

「では、イリア様。動きますよ」

「はっ、はい!」

センルに身を任せるようにして足を動かすが、リードされるままに動くせいで足の動きが全く頭に入ってこない。