ドラゴン達の世話をするヒューリに背を向け、小屋の中へと戻り恋愛指南書を呆れた目で見つめた。

何一つ間違った手順を追ってやっているわけでもないというのに、それ相応の反応が返ってこないのはおかしい。

ーーもしかして、ドラゴンの血を受け継いでいるから?もしかしてこの世界の人達には通用しないとか?

改めて考えてみれば、ヒューリはドラゴンの血を受け継ぐ者達であり、イリアが知る世間一般の男性とは別の血が流れている。

ドラゴンに特殊能力があるように、その血を受け継ぐ者達も並大抵の事は通用しない可能性が生まれてきた。

実験対象が異なれば正確なデータは得られるはずもない。

「まあ……一応練習したと思えば本番で役に経つかもしれないし」

アゼッタから渡されたもう一冊の本に賭けるしかないと、頭を切り替えたその時、ナルが後ろから顔を出てきた。

「何?そんなに色っぽいため息なんかついちゃって」

「ひゃっ!」

ぼーっと本を見つめていたせいか、大きな動きで近づいてきたその気配すらも気づかずその場で肩を上げた。

「ナ、ナル……びっくりさせないでよ……」

「イリアがぼーっとしているのが悪いのよ?どうしたの?何か悩み事?」

その声掛けに素直に実はヒューリを実験対象にしてモテ技とやらを試している、なんて事は口が裂けても言えなかった。