窓の外を見ればこの間薬を投薬し、病と戦い終わった一匹のドラゴンがゆっくりとヒューリに連れられて歩いてきていた。

付けていたエプロンを外して、綺麗な鱗が輝くドラゴンの元へと向かうべく小屋を飛び出した。

「こんにちは!」

ドラゴンに向かって挨拶を投げれば、人間と同じようにドラゴンも一つ鳴いて応えてくれる。

ドラゴンの隣を歩いていたヒューリが、ドラゴンに止まるように指示を出すと大人しく伏せる。

「この子は?」

「ジュナっていう春に子を産んだばかりの母ドラゴンだ」

「初めましてジュナ。私はイリア。とても立派な角ね」

顔を撫でてやると優しい瞳の中にイリアが映りこんだ。艶のある鱗だが、所々欠けた鱗が見える。

流行病の症状の一つとして鱗が欠けてしまうのだ。生え変わると知っていても、病と戦った証が少し痛々しい。

よく頑張ったと優しく撫でれば言葉は通じなくとも、ジュナは何かを悟ったかのように小さく頷いた。

「それで今日はどうしてここに連れてきたの?」

「もう少ししたら子供たちに空を飛ぶ練習をさせる時期なんだがな……」

手招いてある箇所を示され、そこへと視線を動かすと思わず下唇を噛み締めた。

「病によって翼の一部分が壊死したんだ。本能でそこを食いちぎって進行を止めたのは正解だったみたいなんだが……空を飛べなくなったんだ」

翼を見せるようにこちらに広げてきたが、イリアは思わずジュナに抱きついてごめんなさいと言葉を零した。その言葉に何も悪くないよとジュナも喉を鳴らす。