手渡された本にもう一度視線を落とし、じっくりとその内容を頭に取り込んでいく。

年頃の少女達にはこの手の話しはもう頭に入れてあって、自分にはない知識を蓄えているということに焦りを感じ、ひたすら文字を追った。

そんな必死になっている彼女の本をひょいと没収したエルメナは、これだけではまだお茶会には参加しても遅れが目立つと課題を追加してくる。

「イリア様。勉強熱心なのはいい事ですが、これだけではガールズトークにはついていけません」

「そ、そうなのですか?」

「お茶会で女子達が花を咲かせる話題達に触れておく必要があります。ですので、今日は城下町に行って実際に触れてきてくださいませ」

どこからそのような結果に導かれるのかイリアの頭の中で答えを出そうと振り絞ったが、それよりも先にエルメナが二回手を叩くとゆっくりと扉が開いた。

開かれた扉の向こうに立っていたのは、愛らしい表情を浮かべるアゼッタだった。

カーネーションの花びらような柔らかいフリルが使われたドレスを見に纏い、キラキラと耀く黄金色の髪を靡かせながら部屋の中に入ってきたアゼッタは、二人を前にして可憐にお辞儀をして見せた。