興味引かれるものだったら瞳を輝かせ本の世界に没頭することは可能だったが、未知の分野には少々抵抗がある。

それもそのはず、イリアには恋愛経験がないのだから。

「立ち振る舞いにはもう口出しは致しません。本日からは異性を落とす方法をきちんと身につけてください」

「異性を落とす……?」

「はい。狙った相手との恋愛を成就させ、婚約者を逃さぬようにしっかりと捕らえておく必要があります。その為に女を身につけて貰います」

恋愛というものを知らずに育ったイリアには未知すぎる課題だった。

研究ばかりに時間を費やすばかりではなく、家族以外の人との関わりすらもほぼないような生活を送ってきたのだ。縁談も、元はと言えば親元に降ってきた話にそのまま乗っかるようにただ受けていただけ。

イリア自身がどうこうして勝ち取った結果は今のところ何一つとしてない。

「で、ですが、お茶会において恋愛というものは関係のない話では?」

「イリア様。女というものは歳を重ねても恋の話に花を咲かせるものです。何より、イリア様ぐらいの年頃の少女は恋に敏感でなければなりません。お茶会ではそのような話で常に盛り上がりますので、遅れを取らないようにしっかり学んでください」

衝撃的事実に頭を石で殴られたような衝撃が走る。自分をしっかり保たねばと、遠のきそうになる意識を踏ん張って取り戻した。