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こうしてイリアのガラリと変わった日常が始まったが、日々変わらず日が昇りきってからエリーに起こされるのは何も変わらなかった。

ーーあれは……夢じゃないよね?

太陽の光が部屋の中を照らしているのをまだ半分閉じている目で見つめ、覚醒しきれていないぼーっとした頭の中で昨晩のことを思い出す。

侍女達がぞろぞろと入ってくるその光景を眺めつつ、渋々ベッドから出てされるがままに身支度を整えた。

ナルとルガの二人と共に古代文字について語り合い、ドラゴンのヴァイルについてヒューリから色々と教わり、有意義な時間を過ごした。

そして地上とは真逆の時間が流れていることに気づいたイリアは、慌てて地上が朝を迎える前にヒューリと共にヴァイルに乗って地上に送ってもらい、ふわふわした感情のまま自宅へと辿り着いた。

あの時間が全て夢だとしたら、そう考えると怖くなったが侍女達が去った自室でこっそりと鞄の中を確認する。

「良かった……ちゃんとある」

ナルとルガが古代文字について教えてくれたものをメモに取った紙と、ヒューリが帰り際に渡してきたドラゴンの角笛が鞄の中に詰め込まれてあるのを確認し、夢じゃないということに確信が持てた。

イリアはその喜びを胸に仕舞いつつ、これからについてを廊下を歩きながら考えた。