腐敗した地上から避難するべく賢者が生み出した地下世界、カデアトには地上とはない魔力というものが存在し、それがこの空間を作り出した。

風や水も全て魔法によって生成され、そこに芽吹いた植物達が育ち、自然が保たれているという。

昔は多くの村があり人々が生活をしていたが、次第に数が減ってきており今は少数部族しか残っていない。

その少数部族の一つが、ヒューリ達が暮らすクルスデル族。

クルスデル族は唯一ドラゴンの血を受け継ぐ民族として、このカデアトの守り人として代々この地を守っているという。

全ての話を聞いたイリアは、不思議と冷静に全てを受け入れることが出来ていた。

普通であれば御伽噺として聞き流していてもおかしくはないが、この世界を己の目で見て肌で感じている。それが何よりの証だった。

「こんなすごいことをお父様は独り占めして研究していたなんて……」

少し羨ましいような、でもそれ以上の知識をイリア自身が身につけていることには変わりはない。

「このカデアトには調べることが沢山ありそうね」

「それでだ。このナルとルガは古代文字について調べてるんだ。イリアに病に効く治療薬の作成してもらう代わりに、二人に協力してもらってこの本の謎を解くっていうのはどう?」

「え!あたし達もその本について調べてもいいの?!」

「私はこの本の文字が何一つとして読めないの。だから、その方が助かるわ。お願いしても大丈夫かしら?」

「僕は是非やらせてほしい」

「あたしも!!」

今にも興奮のあまり飛びつきそうな二人は、イリアが大きく頷いて見せるとガッツポーズを決めて喜んだ。