暫く薄らと残る道を道なりに歩いて進み小川を渡ると、苔が遺跡を飲み込んだかのような場所に一軒の家がひっそりと隠れるように経っていた。煙突からは白い煙が上がり、小さくだが人の会話する声も聞こえてきた。

人がいるということに緊張するイリアを他所に、その家にノックもせずにヒューリは扉を開けて中へと入っていく。

「ただ今戻った」

ヒューリの声が家の中に響き渡ると、ドタバタと足音が慌てて扉の方へと向かってくる。そして現れた二人の姿にイリアは思わず、扉に隠れるようにして様子を伺った。

「生きて帰ってきた〜!」

「地上はどうだった?腐敗してた?」

「ナル、ルガ、少し落ち着け!」

そっくりな顔を持ち合わせた男女ーールガとナルと呼ばれた二人は、ヒューリの周りを取り囲む勢いで駆け寄って来た。

イリアとそう変わらない年齢で、二人とも燃える夕日のような綺麗な赤髪に思わず見惚れてしまう。

「とりあえずは無事だよ。それに、助っ人も連れて来た」

扉に隠れているイリアに手招きして見せると、イリアが動くよりも先にルガとナルの二人がそちらへと一目散に近づいた。

驚きの声も出せずにいるイリアを見て、二人は目を丸くして呆然と立ちすくむ。

「……地上に人がいたの?」

「呪われた地に人が住める環境なんてないって言われていたのに?」

「俺も最初に出会った時は驚いた。でも正真正銘、地上で生きている」

場の空気が少し重たくなっているのに気づき、イリアは空気を変えるべく自己紹介作戦へと動き出す。