別の場所に傷があるのかと顔を見上げると、反対側の翼を広げ何かをじっと見つめていた。

「そこにも傷があるの?」

ドラゴンが見つめていたその先へと移動したイリアは、初めてドラゴンを見つけた時と同等に衝撃的な光景を目の当たりにした。

「……人?」

ドラゴンの翼の中で守られるようにしながら横たわる一人の青年。歳は二十歳前後だろうか、深い森のような色の髪に健康そうな肌。閉じた瞳からは長いまつげが伸び、鼻筋通ったその顔には色気が存在した。

背丈はスラリとしているのに芯があると思えるのは、鍛えられた筋肉がちらりと見えているからであろう。見慣れない民族衣装を身にまとい、頬には幾何学的模様が描かれている。

何故ドラゴンと一緒に人がいるのか、イリアの中ではその答えを導きだそうと必死だった。

ゆっくりと青年の隣に片膝を付き、その顔を観察する。

「……息は、あるみたいね」

胸が上下に動き規則的な呼吸を繰り返していることが見て取れて一先ず安心していると、心配そんな顔でドラゴンがこちらに顔を突き出してきた。