獅子王という単語に焦点を当てれば、この国の初代国王レオンド・マキタリア・エルドゥターフは獅子のように戦場を駆け巡っていたことから、獅子王と称されていた人物。

その末裔となるライジールに手渡されたその物が、獅子王が持っていた宝剣にはめ込まれたムーンストーンである事に結びつく。

「これが賢者が王に託した大切な鍵だ。ただそれを扱えるのは、イリア殿……君しかいない」

「わ、私ですか?!」

「そうだ。君はこの世界と向こうを渡り均衡を保っていた。地下世界に充満する魔力にも適応する体を持ち、そして二つの世界を愛する者。君は女神と言ってもおかしくない」

「そんな、私はただ……研究が好きで辿り着いたんです」

「それでもだ。辿り着いた先に何があった?君が見た景色を守れるのは君自身なんだ」

ヒューリが持っていたネックレスをイリアの手のひらにそっと乗せると、ムーンストーンが光の渦を巻いた。

「君がこの世界と向こうの世界の掛橋となるんだ。やってくれるかい?」

ライジールの問いかけに今まで苦労して研究してきた記憶が一気に脳内に流れ込み、一つの答えをまとめた。

長年の夢を今この手で掴み取ったのだ、イリアは深呼吸をしてからハッキリと告げた。

「やらせてください、この私に“色々”と!」

「ありがとう、イリア殿」

全て片付いたと思ったのは、イリアを除いた二人だけだっただろう。ネックレスを手にしたまま、イリアはソファーから立ち上がりすごい勢いでライジールに食らいつく。

突然のイリアの動きに目を見開いてキョトンとする彼に構うことなく、イリアは瞳を輝かせたのだった。