研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。



その様子を恐る恐る眺めていると、馬車の扉が開いた。

御者にエスコートされながら降り立った王宮という地に鳥肌が立ってしまう。そこにある空気すらも何か違う、そう感じていた。

漆黒のフードをすっぽりと覆いかぶさって顔が見えない数名の使者が、イリアに近づくとその場で膝を折って頭を下げた。

迎え入れてくれる人に対して申し訳ないが、全然歓迎されているような感じはこれっぽちもしない。

「お待ちしておりました、我が主の番となる者よ」

対応しにくい挨拶に普段通りを心掛けたイリアはドレスの裾を上げて会釈をする。

王宮ではこのような迎え入れが主流などという知識はなかったイリアは、内心驚きしかなかった。

これからお披露目会だというのに、妙に静かで落ち着きすぎている空気感が突き刺さる。

挨拶が終わった使者達はイリアを取り囲むようにして道案内を始めると、馬車もその場から立ち去った。

馬の走る音が聞こえなくなると同時にようやく辿り着いた王宮への入口へと、足を踏み入れる。

ギィと鈍い声を発するように扉が飛びられると、無駄に広い空間がそこには広がっていた。

誰もいない音のない広い空間に一人取り残されたような感覚に気持ちを強く持とうと、小さく唇を噛み締めた。