ウェディングドレス類は後々話し合えば間に合うと信じ、明日の身支度の準備を侍女と共に行っていると、気づけば日は傾いていた。
家族皆で囲む夕食もいつもと違って重たい空気が流れる。
まだ婚約が決まっただけだと場の空気を変えようとしたが、アゼッタはあまりにも急な事に耐えきれなくなったのか涙を流した。
重たい空気のままその日の皆一緒の時間は終わり、明日も早い時間から行動するからと寝る支度を整えた。
ベッドの中に入り暫くして夜が更けていくのを感じながら、いつものようにベッドから抜け出した。
クローゼットの天井を外して荷物を手に取り、動きやすい夜の格好へと姿を変える。
ーーもしかしたら……今日でお別れになるのかな。
明日からの自分の行動が予想が付けられず、そのまま城での生活になってしまったら。
こうやって夜中に起き出して行動することも、ネグルヴァルトに足を向けることもやって来なくなってしまう。
ズキリと痛む心を庇いながら屋敷の外へと抜け出し、我武者羅に走って森へと急いだ。
今のイリアには一秒でも長くヒューリと共に時間を過ごしたい気持ちでいっぱいになっていた。
辿り着いた森の中はいつものように淡い光でイリアを迎え入れ、流れる風がイリアの髪と弄ぶ。
この感覚すら愛おしくなって今にも泣き出しそうになるのを、必死に堪えてヒューリが迎えに来てくれる縦穴を目指す。



