研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。



この場から出ていけという無言の圧と尖った言葉という凶器に、身を震わせながら集まった人達の間をかき分けるようにして早足でフロアの外へと向かう。

外へと出る途中で心配そうなハンナとすれ違ったが、ごめんねの一言を残して、外へと飛び出した。

屋敷の庭園へとその身を隠すようにして上がった息を整えながら、堪えきれなくなった涙を一つ流す。

始めはアゼッタも連れてくるべきだったと思っていたが、この状況になってみて連れてこなくて正解だったと心底思った。

噂というものは変に誇張されたり、その人の勝手な解釈でややこしくなるものだと知っていたが、それを悪用されるとは思っても見なかった。

あの令嬢はロスカーと見知らぬ女である自分が一緒に踊っているのが気に触ったのだろうと頭では分かっていた。

見ず知らずの女が急に出てくれば腹も立つものも何となく想像は出来た。

ただ自分の好きなことを楽しんでいただけだというのに、あの言われようは予想外で周りに敵しかいない状況に恐怖しか感じられなかった。

ーー私何も悪いことなんかしてないのに。人の役に立てるような研究をしていただけなのに。どうして……。

もう一つの涙が零れそうになった時、近くに人の気配を感じその場から離れようと足を必死に動かした。

屋敷の光がどんどんと遠くなる中、小さな噴水のある拓けた場所で遂に動かなくなった体を休ませようとしゃがみ込む。

夜空に浮かぶ月だけがぼんやりとイリアから見える世界を照らし出し、虫たちの奏でる音楽に耳を澄ます。